桃色ドクター
瀬名先生の話題で持ち切りな待合室。
韓流スターの話でもするようなときめいた表情で瀬名先生の名前を連呼するお年寄り。
罪な男。
あの天使のような悪魔のような笑顔。
一度会うと、もう忘れることのできない魅力的な微笑み。
そして、あの甘くセクシーな声。
待合室の椅子は円形に並べられていて、少し居心地が悪かった。
待合室の中の平均年齢を確実に下げている私は、ちょっとした嫉妬の目を向けられながら、視線を避けるように自分の携帯を触る。
登録してしまった瀬名仁ノ介の番号と、登録した名前の後のハートマーク…
私は、そのハートマークを消して病院マークを登録。
受付横の診療時間の案内を見つめているうちに、瀬名先生は月曜日が休みだと言うことを記憶している自分がいた。
月曜は、違う先生が来るらしい。
きっと月曜は、この病院は空いている。
受付の透明のガラスの向こうには、まだ20歳くらいに見えるモデル風の女性がいた。
受付担当のその女性は巻き髪に茶色い髪で、朝からマスカラばっちりの完璧メイク。
さすが、いい医者には綺麗な女性が寄ってくる。
私の頭の中では、その彼女と瀬名先生が仲良く話す姿が浮かんでいた。
そして、気が付くと私の心の中に小さな嫉妬の炎が燃えていた。