桃色ドクター


「平野さん、お入りください」



診察室から顔を出したのは、50代くらいの小綺麗な看護婦さんだった。



私は、よっこらしょ…と口から出てしまったことを後悔しながら、ゆっくりと診察室へ向かう。




真っ白な扉の向こうには…



いるんだ。




魅惑の甘色ドクターが…

私の心を桃色に変えてしまう人。



想像する。



高級そうな椅子に腰かけて、パソコンに視線を向けながら、私に気が付くと微笑む瀬名先生を・・・




私は、一歩ずつゆっくりと、歩きながら扉へと近づいた。



自意識過剰なくらい、待合室で待つ患者さんの視線が気になった。



「あぁ!!無理しちゃだめです!!」




椅子にどっしりと座っているはずの瀬名先生は…



扉を開けて、私の腕を掴んだ。






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