桃色ドクター
椅子に座りながら微笑む姿を想像していた私は、意外な瀬名先生の表情に笑ってしまった。
焦った顔で、白衣の襟も立てたまま、私の腕をそっと掴み、ゆっくりと扉の中へ私を連れて行ってくれる。
そこは、魔法の国。
温かい陽だまりのような、夢の国。
瀬名先生のバカ。
ときめいちゃったじゃん。
先生用の椅子を…
私に貸してくれた。
瀬名先生は、ぎしぎしと鳴る丸椅子に腰かけて、にっこりと微笑んだ。
初めて入る診察室。
瀬名仁ノ介の顔を起きて見るのは初めてで、
昨日とは少し印象が違って見えた。
さらさらストレートだと思っていた髪は、先端だけ少し癖がある。
つやつやのお肌に、見つけた小さなニキビ。
ひげも…ちゃんと生えていて、
朝から急いで剃ったんだなぁ…なんて考えていた。