桃色ドクター
自分のパジャマのズボンも上げられないまま、トイレの壁に両手を押し付ける私を見て、ようやく状況を理解した雅也。
けらけらと笑い出す。
「まじかよ、その歳でぎっくり?お前ももうすぐ30だもんな!」
この人と結婚を決めなくて良かったと心から思った。
正直、どんどん結婚してゆく友達の中で、焦りは感じていた。
雅也が結婚相手としてふさわしいかどうかは、自分でも悩んではいたが、彼以外に結婚を考える相手もいない。
そろそろ結婚を切り出してみようかな、なんて考えたりもしていた。
良かった。
やっぱ、雅也とは結婚できない。
「お願いだから、ベッドまで運んで!」
ノーメイクの上、必死の形相の私を見て、雅也は恐ろしいものを見るかのような顔をした。
呆れたように、私のパジャマのズボンを上げ、軽々と私を抱き上げた。