桃色ドクター
電車に乗って、家へと戻る途中・・・
私は、瀬名整形外科の前を通りたくなった。
もう診療時間は終わってる。
誰もいないことはわかっていた。
「これも腰の運動だよね」
ひとりで言い訳しながら、大好きな場所へ向かう。
私は何を期待しているんだろう。
どうして、こんなにも会いたいんだろう。
瀬名整形外科の看板が遠くに見える。
「ちょっと!!平野さん!!」
背後から聞こえた声は、まぎれもなく甘い声のあの人。
「あ。瀬名先生」
「何してるんですか?安静にって言ったでしょ?それに、そんな荷物まで持って!!」
真剣に怒ってる顔がかわいくて、笑ってしまった。
「何笑ってるんですか?こら!」
コツンって・・・私の頭を叩くまねをして、瀬名先生は私の荷物を持ってくれた。