桃色ドクター
「ばいばい」
涙が出そうだった。
消えそうな声をちゃんと聞き取ってくれる瀬名先生。
言葉の奥の私の『キモチ』までしっかりと理解してくれているようだった。
「待ってるから。また・・・来いよ」
熱い目で、私を見つめた。
時間が止まればいいのに。
瀬名先生は、右手を軽く上げた。
くるっと背を向けて、私は走って駅の階段を上った。
こんなに一緒にいて楽しい人は初めて。
神様はどうして今まで出会わせてくれなかったのだろう。
どうして、今・・・出会ってしまったんだろう。