アンダンテ



なんで。
なんでこうなるんだ。
「あはは、千尋まさかの課題10枚~♪」
「…いやいや笑いごとじゃないから」
シャーペン片手に、プリントとひたすら格闘しているあたしの名前は、ちひろ。…佐藤千尋。どこにでもいるような、ごくごく普通の女子高生。
だから、ものーっすごく眠たくたって、少女漫画によくあるような、『授業を屋上でサボる』ことは勿論できないし、『生徒会長で私室でサボり♪』なんてこともできないわけで。
とにかく大変なんですよ、妄想の国の皆さんと比べたら。
「誰かあたしを妄想の国に連れて行ってくれないかな…」
それは一生叶わない願いだろうな。理想と現実って遠いよ、ホント。結局は、夢見ることしかできないんだ。
「…てゆーか、三浦の授業に寝ること自体間違ってるって~!」
右手でウェーブのかかった茶色い髪をくるくるとまくのは、酒井恵。ちなみに、小中高合わせて12年間同じ。別に地元が同じだけで、家はそんなに近いわけではないんだけど。そんなわけで…もう腐れ縁って感じの関係。



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