シークレット



「雫泣いてたから‥心配で…」


スッ‥

透明なビニール傘が私の頭上を覆う。


「ほらっ風邪引くぞ。
 てかびしょ濡れじゃん。
 帰ろうぜ」


「帰らない…」



雨と涙が混ざり合う。


「………こっち向いて」

「え??」



‥―チュッ


梓は雨で濡れた私の頬にキスをした。

哀しみを溶かすような
甘い甘いキスを。



びっくりして
私は何も言えなかった。


「‥みんな待ってるから帰ろう」



             
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