シークレット


「じゃあ、家早く行こ♪」


梓は周りを見渡してから
棚にあった唯一の物を取った。


家族で撮った写真。

みんな笑顔の写真。



「もう少しここにいてぇから
 夕方まで一人にしてくれるか?
 夕方になったら雫ん家行くから。」


「わっわかった」




そうだよね‥

何年も住んでた家なんだもん。
思い出の詰まった家なんだもん。



家に来たら
もうこの家には戻れない。


「夕方に来てね」



そう言って家を出た。

家を出る時、
一度梓の方に振り返ると
梓は家族写真を見て
声を押し殺して泣いていた。



             
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