粛清者-新撰組暗殺録-
二人は常に武田を監視しながら動向を探っていた。

そして慶応二年九月八日。

遂に武田は動き出す。

この日の早朝、屯所を抜け出した武田は追っ手がない事を確認して竹田街道へと足を伸ばしていた。

新撰組には土方や総司をはじめとする二枚目の剣客が大勢いる。

男色家の武田にとっては天国のような場所であったろうが、それでもこのまま新撰組に籍を置いていれば、いずれ必ず維新志士どもによって討たれる事になるだろう。

「死ぬのがわかっていて己の言い分を通そうとするのは馬鹿のやる事…私は要領よく世の中を渡っていくさ…必要とあらば裏切りだって…」

薄ら笑いを浮かべながら、武田は銭取橋に差し掛かる。

と、その時。

武田は橋の中程で一人の剣客が待ち構えている事に気づいた。

あれは。

「篠原泰之進?」

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