粛清者-新撰組暗殺録-
「まさか、嘘でしょう!斎藤さんが脱退なんて!」

病床で永倉からその話を聞いた総司も、信じられないといった表情で目を丸くする。

「いや…土方副長からの直接の話だ。嘘ではない」

永倉は険しい表情で言った。

「あーあっ!やっぱりね!」

そばで話を聞いていた秩が、パンッと畳を叩く。

「私は見損なったなんて思ってないわよ!あの人はああいう人なのよ!私は前からそう思っていたもの!」

そう言う割には何だか悔しそうな秩である。

「それで?近藤さんや土方さんは?勿論斎藤さんを引き止めたんでしょう?」

祈るような思いで永倉に尋ねる総司。

だがその思いを裏切り、永倉は首を横に振った。

「近藤局長も土方副長も、二つ返事で御陵衛士の別行動を許可した…俄かに信じ難い話だがな…」

冷静を装っている永倉も、歯噛みしているのは隠しきれなかった。

「別働部隊などとただの建前だ…伊東の狙いは明らかに新撰組からの脱退。そして近藤局長に叛旗を翻す事だ。局長ほどの人ならば、それがわからぬ筈もないだろうに…!」

「…近藤さん…」

総司も信じられないといった表情で俯く。

と。

「ごほっ!ごほっごほっ!」

二、三度咳き込むと同時に、総司は咄嗟に口を押さえた。

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