粛清者-新撰組暗殺録-
そんな総司と秩が初めて出会う事となったのは、その年の初秋の事であった。

その日総司は、一番隊の隊士達と共に市中の巡察を終えて屯所へと戻ってくる最中だった。

その帰り道に石井屋の前を通る。

「沖田さん、ここですよ。例の娘がいるっていう…」

「娘?」

総司は何の事かわからずキョトンとする。

「ほら、この間お話したじゃないですか。侍を目の敵にしているっていう気の強い質屋の娘。秩とかいう名前の」

「ああ、あの話ですか」

総司は相変わらずニコニコしながら話を聞いている。

「まぁいいんじゃないですか?新撰組は人斬り働きで幕府からお金を貰っている集団ですから、人によっては蛇蝎のように嫌う事もあるでしょう。要は見方次第ですよ」

…四月の殿内暗殺から半年。

あれから総司が人を斬る事はなかったが、それでも有事の際にはいつでも刀を抜く覚悟は出来ていた。

必要とあらば人を殺す覚悟も。

その為に剣の腕を磨いてきたのだ。

天然理心流の剣は只のお飾りではない。

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