粛清者-新撰組暗殺録-
その夜。

「ん…」

新撰組屯所の見張りに立っていた隊士二人が、門に近づく不審な人影を発見した。

よく見るとそれは。

「おお、石井屋の秩ではないか」

顔見知りだったので隊士達は油断していた。

が…「!」

彼女が白木の鞘に納められた刀を持っている事を知るや否や、青い顔をして剣を抜く!

「秩!貴様何の真似だ!」

「……」

彼女は鬼気迫る表情で、底冷えのするような声で言う。

「沖田総司を呼びなさい」

…その報せが総司の耳に届いたのは、秩が屯所を訪れてから五分ほどした頃であった。

彼が屯所の入り口まで出向くと、彼女は大勢の隊士達に取り囲まれて牽制している最中だった。

「何ですかこの騒ぎは…みっともないから退いて下さい」

総司は隊士達の人ごみを掻き分ける。

「娘さん一人を囲んだとあっては新撰組の名折れです」

「……」

総司の姿を確認した秩は、忌々しげな表情で彼を睨む。

「沖田総司…貴方、新撰組の組長って事は幹部よね…私と一対一の勝負をなさい…私がこの手で倒してあげるわ」


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