粛清者-新撰組暗殺録-
「どうせ新撰組なんて人殺しの集まりでしょう!それの幹部なら誰だって同じよ!私の知人を殺した奴の仲間なら、新撰組はみんな私の仇よ!」

復讐に燃える秩には、既に現実が見えていなかった。

新撰組を忌み嫌う本当の理由は、刀を穢すからでも、人斬りを繰り返す集団だからでもなく、何より己の近しい人を殺されたから。

故に新撰組の中でも俊才として名を轟かせる総司に、新撰組に対する全ての恨みをこめたのだ。

…秩と隊士達の睨み合いはまだ続く。

いずれどちらかの集中力が揺らいだ時、この睨み合いに決着はつく。

十中八九、新撰組隊士が得意とする集団戦法によって秩は斬殺されるだろう。

だがそれは新撰組の名を地に落とす行為である。

女一人に壬生狼が寄ってたかって斬りかかったとあっては武士としてこの上ない恥。

何よりこのまま死なせてしまうには、気丈に新撰組屯所に乗り込んできた秩が不憫すぎる。

「…わかりました」

そう言って総司は、そばにいた隊士に自分の羽織と鉢巻きを持ってこさせた。

「秩さん…貴女の勝負お受けしましょう」

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