粛清者-新撰組暗殺録-
総司は押し黙ったまま、抜刀すらしようとしない。

「…討たれてやろうなんて思っているのならば考えを改めなさい!抜きなさい!抜いて私と勝負をなさい!」

それでも総司は抜刀しようとしなかった。

「…えあああああっ!」

秩は構わず斬りかかった!

刀を正眼に構え、右上段から力強く袈裟懸けに斬り下ろす!

多少荒削りではあるが、素質のあるいい太刀筋だった。

しかし総司は、その袈裟斬りを一寸の間合いを残してかわした。

秩の刀の切っ先は、総司の鼻先すらかすめていない。

「お…おのれぇっ!」

秩は怯まず攻めに転ずる。

下段から顎めがけて斬り上げ、再び今度は逆袈裟に斬り下ろす。

総司はこれも見事にかわし、そして。

「!」

遂に腰の刀を抜いた。

秩は咄嗟に間合いを取って警戒する。

「……」

総司は抜刀して構えるでもなく、無形の位のまま秩を見据えていた。

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