粛清者-新撰組暗殺録-
総司は感情の欠片もこもっていない瞳で、褌一丁の惨めな姿の芹沢を見る。

「芹沢さんは、大和屋庄兵衛という人を覚えていますか?」

「や…大和屋…だと…?」

芹沢は眉を潜める。

こんな時に何故そんな事を尋ねるのかもわからなかったが、誰の事を言っているのかもさっぱりわからなかった。

つまり芹沢にとって、秩の祖父を店ごと大砲で焼き払って殺したという事は、忘れてしまうほど小さな事だったという事だ。

「そうですか…」

総司は目を閉じ、溜息をつく。

そして!

「ぐあっ!」

予備動作すら見えないほどの素早さで、芹沢の胸を袈裟懸けに斬る!

泥酔している事もあったが、神道無念流(しんどうむねんりゅう)の芹沢ほどの男が、全く何の反応もする事ができなかった。

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