粛清者-新撰組暗殺録-
文久三年九月二十六日深夜。

皆が寝静まった新撰組屯所内。

その闇の中を動く影があった。

影の名は、御倉伊勢武。

新撰組隊士である。

彼は他の隊士達にばれないように屯所を出ると、草履を履き、静かに門を潜ろうとした。

と。

「こんな夜更けにお出かけか」

声が聞こえ、御倉は動きを止める。

振り向くと、門にもたれ掛かって一人の男が腕組みしている。

「三番隊組長の…斎藤…」

「ほう…流石に各隊士の顔と名前は把握しているんだな…なかなか優秀な間者だ」

「か…間者ですって?」

御倉は動揺した面持ちで、それでも愛想笑いを浮かべた。

< 40 / 134 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop