粛清者-新撰組暗殺録-
近藤は総司や二番隊組長の永倉新八ら九人と共に鴨川西岸の河原町通りを、土方は残りの二十三人と共に鴨川東岸の祇園から縄手通りを調べていった。

…この時近藤の頭の中には、新撰組の実力を認知させる事以外はなかった。

新撰組を擁する会津藩に新撰組の力を見せ付け、幕府の中でその地位を確固たるものにしようと考えていた。

その為には、この京都大火計画を新撰組の手で叩き伏せる。

これはまたとない、絶好の機会なのだ。

…河原町通りの商屋や茶屋を虱潰しに御用改めしていった近藤の一隊が、三条小橋の西にある一軒の旅籠の前で足を止めたのは午後十時ごろだった。

「待て!」

近藤は手を上げて隊士達を制した。

行灯の影に透かして、軒下に鉄砲と槍が十丁ほど立てかけてあるのが見えた。

すかさず総司がこれを縄で絡げる。

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