粛清者-新撰組暗殺録-
土方はそういうが、なかなかどうして、青年の刺突の鋭さには目を見張るものがあった。

毎日のように反復して青年の刺突を受け止めているのであろう、巻藁はもうボロボロに朽ち果て、もうすぐ彼の木刀によって貫かれてしまいそうだ。

外見はまだ幼さの残る優男だというのにあの青年、末はとてつもない剣客になるに違いない。

或いは、時代を揺るがすほどの強さを秘めた男に…。

「土方さん、彼は…?」

「ああ、奴は沖田総司。俺や近藤さんと同じ天然理心流でな…近藤さんをして、『次に天然理心流を継ぐのはこの男だ』と言わしめるほどの逸材だ」

「道理で…」

斎藤は同じ新撰組隊士である筈の総司を見て、何故か血の滾りを抑える事ができなかった。

…ともかく新撰組上洛後、程なくして斎藤は副長助勤三番隊組長、総司は剣術教授方一番隊組長を任命される。

共に剣の腕を認められての事だった。

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