粛清者-新撰組暗殺録-
禁門の変の僅か一日の闘いで、長州藩犠牲者は四百近くに上るも、対する幕軍は六十足らず。

現時点での佐幕派と倒幕派の力の違いをまざまざと見せ付ける形となった。

そして禁門の変が終結した翌日、久々に秩と逢う事になった総司は…。

「労咳!?」

彼女に己の病の事を洗いざらい話した。

「はい…新撰組には松本良順先生という高名な典医さんがいらっしゃるんですけど、その方に診て頂いたので間違いありません。僕は労咳だそうです」

総司はまるで他人事のように軽く秩に伝えた。

いつものように屈託のない笑みを浮かべて。

「何を言ってるの沖田様!そんな呑気に!」

秩が怒るのも無理はない。

先に述べたとおり、幕末当時に労咳にかかるという事は死刑宣告にも似た意味を持っていた。

確実に死ぬとは言い切れないが、死に至る確率はこの上なく高かった。

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