粛清者-新撰組暗殺録-
「お出かけですか、山南さん」

総司が尋ねる。

「ああ、明里を連れてちと飲みに出掛けようと思ってな…どうだ、沖田君も?」

「折角ですけど、酒は病によくないので…斎藤さんでも誘ってあげてくださいよ」

「誘ってはみたんだが…『酒が入ると人が斬りたくなる』とかで断られた…根はいい奴なんだがな…」

そう言って山南は笑った。

まさに上司としては理想的な人間だ。

「そういえば、明里が君の事をからかったそうだな…すまん、迷惑をかけた」

彼は総司と隣に立っていた秩に頭を下げる。

「そ、そんな!頭なんか下げないで下さい!気にしてませんからっ!」

恐縮した秩が言う。

「そうか…有り難う。明里、お前もいい加減にしておけよ」

「はい…許してちょうだいね、総司君にお嬢さん」

山南に叱られて、明里は少しシュンとしていた。

とにかく二組の恋人同士は、小一時間ほど他愛のない話で盛り上がった。

「さてと…我々はそろそろ行くよ…ああ、そういえばお嬢さん」

「は、はいっ」

山南に突然呼ばれ、秩は驚いたように目を丸くする。

「沖田君は女に初なところがある…しっかり甘えさせてやってくれ」

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