粛清者-新撰組暗殺録-
斎藤は総司の言葉に同意も異議も示さないまま、彼のそばを通り過ぎていった。
…ただ、思う。
新撰組局中法度といい、総司の先程の言葉といい、この新撰組という組織は、局長・近藤勇とその理想を狂信する者達の集団に過ぎない。
この組織の中で生きていく為には、己もまたその理想に狂信していかなくてはならない。
士道に背くあるまじき事。
敵前逃亡は士道不覚悟。
現代で考えてみれば狂信としか言いようのない思想であったが、この幕末の動乱の中ではその思想が至極当然の事であり、そうしなければ生きてはいけなかったのだ。
(もっとも…)
廊下を歩きながら、斎藤は薄笑みを浮かべる。
(新撰組に入隊してから一月かそこら…それでもこの思想に拒絶しないところを見るに…俺も既に『狂信』しきっているという事か…)
果たして、その狂信が正しい事なのか否か。
その答えを考える余裕すら与えないまま、脱退者には早くも新撰組の追っ手が差し向けられていた。
思えば、これが史実に残されている限りでは新撰組の隊内暗殺第一号である。
…ただ、思う。
新撰組局中法度といい、総司の先程の言葉といい、この新撰組という組織は、局長・近藤勇とその理想を狂信する者達の集団に過ぎない。
この組織の中で生きていく為には、己もまたその理想に狂信していかなくてはならない。
士道に背くあるまじき事。
敵前逃亡は士道不覚悟。
現代で考えてみれば狂信としか言いようのない思想であったが、この幕末の動乱の中ではその思想が至極当然の事であり、そうしなければ生きてはいけなかったのだ。
(もっとも…)
廊下を歩きながら、斎藤は薄笑みを浮かべる。
(新撰組に入隊してから一月かそこら…それでもこの思想に拒絶しないところを見るに…俺も既に『狂信』しきっているという事か…)
果たして、その狂信が正しい事なのか否か。
その答えを考える余裕すら与えないまま、脱退者には早くも新撰組の追っ手が差し向けられていた。
思えば、これが史実に残されている限りでは新撰組の隊内暗殺第一号である。