粛清者-新撰組暗殺録-
「新撰組に私的な理由での脱退は許されない。壬生屯所に戻ったところで、俺に残された道は切腹のみだ。明里にはどちらにしろ悲しい思いしかさせられない」

「そんな…」

とうとう堪えきれず、総司は涙をこぼした。

…新撰組に入って、泣いたのは初めてだった。

「おいおい…」

山南はゆっくりと総司に歩み寄り、彼の肩を叩く。

「新撰組一番隊組長ともあろう男が、泣く奴があるか」

「でも…」

子供のように泣きじゃくる総司を見ながら、山南は覚悟を決めていた。

「さあ、泣き止んでくれ沖田君」

彼は総司と肩を組む。

「君は肺を患っているのだろう。夜の冷たい空気は体に毒だ…早く帰ろう」

「え…」

総司は山南の顔を見る。

「帰ろうって…山南さん…」

…山南は静かに頷いた。

「介錯は…君に頼めるかな、沖田君」


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