粛清者-新撰組暗殺録-
翌日。

「斎藤さん」

たまたま体の具合のよかった総司が、屯所に顔を出していた。

「沖田君か…何の用だ」

折角会いに来た総司に『体の具合はどうだ』の一つも言わない辺りが斎藤らしい。

「斎藤さん、外の女性は誰なんです?」

「…女性?」

刀の手入れをしていた斎藤は、狐につままれたような顔で総司を見た。

「ええ…小袖姿の女性が、僕が来た時からずっと屯所の門の前にいるんですけど…」

「……」

最近志士達の水面下での動きも活発になってきた。

もしかしたら新撰組内部の動向を探る為にいずれかの藩から送られた勤皇派の間者かもしれない。

そういう曲がった捉え方しかできない斎藤は、早速手入れを済ませた刀を帯刀して外に出てみた。

するとそこにいたのは。

「ああ…やっとお会いできましたね、お侍様」

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