粛清者-新撰組暗殺録-
昨夜の娘が、輝くばかりの笑顔を浮かべてそこに立っていた。

「……」

斎藤は無表情のまま娘の顔を見る。

そして次の瞬間、鋭い眼差しで娘を睨んだ。

「な…なんでしょうか」

流石に怯む娘。

斎藤は尚も睨む。

「お前…昨日の志士の女か何かか?」

「は?」

「でなければどこぞの倒幕派志士の子飼いの間者か何かか?」

「な、何を仰られているのか分かりません…」

「…だろうな」

斎藤は呆れたように溜息をついて、娘に背を向けた。

もしやと思って帯刀してまで出てきたが、この娘が間者かどうかなど、言動を見ていればすぐわかる。

これを見誤るほど斎藤の洞察力は浅くない。

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