☆花咲く頃に.。.:*・°

病室に行くと、父のベッドは空だった。

泌尿器の検査が、また長引いているのだろうか?

いつもの様に、面談コーナーで待つ事にした。


今日は夕方と言う事もあり、外はテールランプとお店の照明で照らし出され、

綺麗な形の山が、夕闇にこれ以上ない程のシルエットを写し出していた。


母はまた、メガネを忘れた。

それでも8階からの眺めは綺麗だと、外をボンヤリと眺めていた。


ふと、エレベーターの方に目を向けると、姉が手を振りながら近付いてきた。

どちらからともなく

『お疲れ様ぁ〜。』と声をかけて、三人で面談コーナーの椅子で、父の帰りと先生の話を待った。

何故だか知らないけれど、振り向くタイミングがいいのか、ナースに押されて車椅子に座る父の姿が見えた。

「あ、おとーちゃん。」


母も姉も

『さ〜すがぁ〜。』と……。

姉が来た事に、父は驚いている様子だった。

『お前、今日、早かったな。』

そんな父に、姉は

『今日は、何の検査してたの〜?』と、なるたけ父に話をさせた。

泌尿器の検査は大変だったらしい。エコーも撮っての検査。


そこへ泌尿器科のナースが二人、今日の検査の概要を図解した紙を持ってやって来た。

姉が受け取り、父に

『これは?これは?』と聞いている。

母は…見てもわからないからと言って、病棟の隅の椅子に行ってしまった。

今日の担当ナースは二名。男性のナースが五時の採血にやって来た。

先生のお話まで、もう暫くお待ち下さい。

もう暫く……小一時間ほど、待ちました。

姉は、早退しなくても間に合う時間に呼ばれました。

そして……

検査後の割と元気な父が

『俺も聞きに行く。』

そう言って、家族みんなで、ナースステーションへ向かいました。


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