この世界で君を愛す
「どうぞ」


真奈美さんは僕と正木の前にお茶を出すと いつものように微笑んだ。


だけど少し悲しそうに見えた。




正木は咳払いをすると明るい声を出した。


「いやぁ すっかり秋ですね。俺は食欲の秋!かな」


「お前の食欲は年中無休じゃないか」


「ひどいじゃないですか上田さん。真奈美さんの前でやめてくださいよ」


ムスッとした正木の顔を見て真奈美さんは笑った。


「お二人の会話を聞いているとおもしろいです。ちょっと元気になりました」


「真奈美さん…」


「正木さん…この前の事を心配して来てくださったんでしょう?」


真奈美さんはすっと立ち上がると 奥の部屋から白い封筒を二通持ってきた。


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