この世界で君を愛す
二人が出ていった後 部屋の中には静かな空気が流れた。


「あの…。拓也君もさっきの手紙読んだんですよね?」


「はい。まだ読めない漢字ばかりなので 私が読んであげました」


「それで…拓也君はなんて…?」


「特に何も…。まだ7歳ですから理解できないことが多いのだと思います。でも何回も読まされて…。拓也なりに心に響いたのでしょうね。これから少しずつ わかっていくのだと思います」


そう言って真奈美さんは窓の外に目をやった。



外ではキャッチボールをしてはしゃぐ拓也君の姿が見えた。




『キャッチボールをしてくれると思います』



拓也君宛ての手紙の言葉が浮かんできた。



外の二人は気付いているのだろうか。



今している事が深い意味を持つということに…。




少し開けた窓の隙間から 楽しそうな二人の声が聞こえた。




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