この世界で君を愛す
夕食を食べ終わり 私が食器を洗いながら見ると…白いのに『チョコ』と名付けられた仔犬は 渉の膝の上で気持ち良さそうに眠っていた。


お腹を上に向けて寝ている姿は なんとも無防備で可愛かった。


私は手を拭くと 渉の隣にそっと座った。


「かわいいね」


「うん。かわいい」


渉がチョコのお腹を撫でると鼻をピスピスと鳴らした。


渉はチョコのお腹を撫でながら言った。


「未知?」


「なあに?」


「僕が事故に合ってからの事…まだ話してなかったよね?」


「…うん」


私は渉の顔を見た。


渉は穏やかな表情をしている。



私はちょっぴり怖くなって 渉の腕に自分の体をくっつけた。



その話は今まで聞いたことがなかった。



聞いたら…あの日渉は死んだのだということを思い知らされる。



それが怖かった。



渉は…今こんなに近くにいるのに…。




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