この世界で君を愛す
私は 渉が亡くなってからの自分の姿を思い出していた。


目を閉じると…あの時の感情が蘇り 私は涙を流していた。



悲しかった。



辛かった。



人波の中に 渉の姿を探していた日々。



私は…いつも…渉の名前を呼んでいた。




「未知」


渉が私の手をそっと握った。



この低くて優しい声を何度聞きたいと思ったことか。


私の名前を呼ぶ渉の声を どれほど求めたことか。



「また泣いてる」


そう言って渉は私の涙を指ですくった。


< 170 / 310 >

この作品をシェア

pagetop