この世界で君を愛す
「未知。思うんだけどさ 人の一生って長いか短いかで決まるものじゃないんじゃないかな。僕は未知と出会ってからの数年で めいっぱいの幸せをもらえた。一生分の幸せを未知からもらったんだ。後悔なんてないんだよ。…でも一つだけ…未知が僕のせいで泣いているのが辛かった。だから僕は戻ってきたんだよ」


「渉は本当に幸せだった…?」


「当たり前でしょう?僕は幸せな男だよ」



渉は私を抱きしめた。



「だから未知?僕をかわいそうだと思わないでほしいんだ。僕は最高に幸せだったんだから。未知は幸せじゃなかったの?」


「し…幸せ…だ…ったよ」


渉は私の体に回した腕に少し力を入れた。



「未知も幸せだったなら…もう悲しまないでほしい。幸せだった事まで忘れないでほしいんだ。もったいないでしょう?」



涙が流れて言葉が出てこない。



「未知はちゃんと前を向いて歩いて行くんだ。僕はずっと見守っているから。幸せにならないと怒るよ?」


渉は私のほっぺたをつねるとクスクス笑った。


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