この世界で君を愛す
「未知…僕に幸せをくれてありがとう。これが言いたかったんだ」


「わっ渉ぅ…」



ぐちゃぐちゃの顔で泣く私の髪を 渉は優しく撫でてくれた。


目を覚ましたチョコが 不思議そうに首をかしげて しっぽをパタパタ振っていた。





切なくて…悲しくて…幸せな…夜だった。





花火の日…。


目覚めると渉の姿はなく 不安になった私は渉を探した。


渉はすぐに見つかった。


キッチンの床にうずくまって 声を殺して泣く姿がそこにはあった。



渉は怖かったんだ。


自分が消えることが怖かったんだ。


渉は私のために戻ってきてくれた。


でもそのために 知らなくてよかった孤独と恐怖を感じていたのだ。


私はそんな事にも気付かずに…怖いのは自分だけだと思っていた。


ごめんね 渉。




私も…渉が安心できるように強くならなくちゃね。



< 172 / 310 >

この作品をシェア

pagetop