この世界で君を愛す
風が吹いて 落ち葉が舞い上がった。


「うーっ…本当に寒いっすね!これからどうします?まだしばらくは帰れないだろうし。」


背中を丸める正木に 僕は少しためらってから言った。


「…もし…時間あるなら 付き合ってくれないかな。」


「俺は全然暇ですけど。どこに行くんですか?」


「僕の実家に。行くべきかどうか悩んだんだけど…。両親に会いたいんだ。会わなくても 近くでこっそり見るだけでもいいしね。」


「上田さん…。俺は全然大丈夫っすよ!でも…俺でいいんですか?未知さんは?」


「未知はいないほうがいいんだ。もし泣いちゃったら 格好悪いし。」


「じゃあ…上田さんの涙は俺がしっかりと見届けますから。」


そう言うと正木は笑った。



正木はきっと 僕の気持ちを理解している。



僕が泣いたら きっと未知も泣いてしまうから。



だから 未知は連れていけないんだ。



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