この世界で君を愛す
翌日の午前中 僕と正木は実家を後にした。


帰り際に母が「未知さんと食べて」と言って タッパーを一つくれた。


中身は見えなかったが 朝早く起きて作ってくれたのかと思うと…目頭が熱くなった。



またここに来れる保証はなかったが 誰も「さようなら」とは言わなかった。



「じゃあね!」



そう言って僕は車に乗り込んだ。



曲がり角を曲がる直前にバックミラーを見ると いまだに家の前に立って僕を見送る家族の姿があった。



僕は涙が流れるのを振り払うように ハンドルを切った。




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