この世界で君を愛す
住宅街に入ると 僕は車のスピードを落とした。


ここまで来ると さすがに未知も緊張してきたらしい。


二人とも無言で 車内はラジオの音だけが聞こえていた。


ライトの先に白いフェンスが見え 僕はその前にゆっくりと停車した。


未知が口を開いた。


「アパートを出る前に電話したから…首を長くして待ってるかもね!」


「でも未知?僕が一緒だという事は言ってないんでしょう?」


未知は俯いた。


「…うん。でもね。すごい人を連れて行くよって言ってある。渉だとは言ってないけど。」


「そっか。びっくりしすぎて腰を抜かさないといいんだけど…。」


「あはは。本当。」



僕は未知の頭に手を乗せてから言った。


「じゃあ…行こうか。」


「うん。」



僕は不安を振り切るように勢い良くドアを開けた。



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