この世界で君を愛す
「あのね お母さん。この人は渉なの。本当の…渉なんだよ。」


母親は未知の顔をじっと見て言った。


「未知…あなた自分が何を言ってるか わかってるの?」


「わかってるよ。」


母親は未知と僕を交互に見た。


「…とにかく 中に入りなさい。そちらの方もどうぞ。」



「そちらの方」…。


その言葉は僕が僕であることを信じていない証拠だった。


無理もない…ことだ。



「中に入ろう?」


俯く未知の背中を 僕はそっと押した。



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