この世界で君を愛す
「未知 来てたのか。」


未知の父親は部屋に入ってくるとそっけなく言ったが 口元が微かに上がっているのを見ると 未知に会えて嬉しいのだと僕は感じた。


そして僕を見ると目を見開き鞄を落とした。


「き…君…は?」


「そっくりでしょう?私も見た時は心臓が止まりそうになったわ。」


母親が鞄を拾い上げながら言った。



「お父さん お母さん。ちゃんと聞いて欲しいの。この人は…本当に渉なんだよ?」


「何をバカな…。」


父親は短く唸ると着替えもせずに腰を下ろした。


「この男はいったい誰なんだ?未知…正直に話しなさい。騙されているのかもしれん。」


「だから…。」


未知は涙目になりながら説明をした。



僕達はこの説明を 今まで何度してきたのだろう。


その度に悲しい想いもして…。



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