この世界で君を愛す
「渉君。あの時君は…未知を必ず幸せにすると言ったね?」


「はい。」


「そして その後でこう言った。未知を残して絶対に死なないと…。私はね その言葉を聞いて結婚を許したんだ。」




僕は胸の痛みに耐えられず 下を向いた。


僕は未知を幸せにするどころか 悲しみのどん底に突き落とした。




「お父さん…約束を守れず…すみませんでした。」


僕の目から涙が流れ 鼻先からポタリとカウンターの上に落ちた。



父親は酒を一口飲むと 静かに言った。


「渉君。人の生死は自分で決められないものだ。君の事故は…残念だが仕方のないことだと私は思っているよ。この前はキツイ事を言って悪かったね。」


「お父さん…。」


「だけど わかって欲しい。私達はやっぱり未知が可愛いんだ。未知が辛い思いをするのは…耐えられないんだよ。」


「…はい。お父さんにそう言われることは覚悟してました。」


僕はビールを一気に飲むと おかわりを頼んだ。



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