この世界で君を愛す
私が泣きじゃくっている間 正木君は何を言うでもなく ただそばにいてくれた。

私の隣にしゃがみ込んで じっと地面を見つめていた。




こんな時…死ぬほど辛い時…誰かにきつく抱きしめて欲しいと思う。



でもそれは…渉のぬくもりを求めているだけ。



渉じゃない誰かに 渉を無理やり重ねようとしてるだけ。




きっと正木君はそれをわかっているから そうしないのだろう。 


私が…自分自身で乗り越えなくてはならないことを…正木君は知っていた。


私も…わかっていた。




まだ流れ続ける涙を拭うと 私は正木君に言った。

「連れて行って欲しいの」

「どこにですか?」

正木君は顔を上げた。


「渉が事故に合った場所に連れてって」




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