この世界で君を愛す
かつて渉が通っていた明清大学の前には 桜の木が連なる道がある。

『桜通り』と呼ばれるその道は 春になると桜のトンネルになり 私と渉はそこをくぐるのを 毎年楽しみにしていた。



「渉はここで…」


桜の木を見上げると花はすでに終わり 葉っぱの隙間から空が見えた。


「今年は一緒にくぐれなかったな…」


私達の大好きな場所で 渉は事故に合って死んだ。


渉は最期に何を思っただろう。


怖かった?

痛かった?

悲しかった?

私の事を想ってくれましたか?




胸がギュッと締め付けられて痛くなり また涙が溢れてきた。




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