この世界で君を愛す
私の後ろに立っていた正木君が口を開いた。


「未知さん。俺にとって上田さんは兄貴みたいな存在でした。頼りになるし いつも温かくて…。上田さんが未知さんの話をする時はいつも幸せそうで…俺も…上田さんがいなくなったなんて信じられません」


私は正木君に背を向けたまま聞いていた。


「俺…上田さんが未知さんをどれだけ大切に思っていたかわかるんです。だから…未知さんが悲しんでいるのは きっと上田さんも辛いと思ってるはずです」


正木君も悲しんでいるのは 声の震えでわかる。


「未知さん お願いです。少しずつでいいから…時間がかかってもいいから…一歩ずつ歩いて行きましょう。上田さんもそれを望んでるはずです」


この悲しみから解き放たれる時なんて永遠にこない気がした。


でも正木君が心配してくれてるのはわかる。


「…うん。そうだね」


私は短い返事をして 徐々に暗くなっていく空を見上げた。




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