この世界で君を愛す
桜のトンネルを抜けた。


目の前には 一年前と同じオレンジ色の大きな夕日…。


もし振り向けば 私一人の影だけが揺れているだろう。



夕日に照らされた渉の顔を見上げると 渉はニッコリと微笑んだ。


「未知…。僕は君の笑った顔が1番好きなんだ。その事は忘れないで。」


渉は私を引き寄せると そっと抱きしめた。



たまらず涙が流れた。


「渉…ありがとう。一緒にいてくれて あり…がと…。」


「…うん…。」


「心配させて ごめ…んね。」


「うん…。」


「渉が…大好き…だよ…。」


「…うん。知ってる…。」



私は顔を上げると 最後のキスをした。


本当に最後のキスも やっぱり涙の味がした。




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