この世界で君を愛す
渉は私の顔をのぞきこんだ。


「ほら。笑って?」


私は涙が止まらないままの顔で笑った。


「よし。」


渉が私の頭をポンと叩いた。




「未知。ここからは一人で戻るんだ。できるね?」


「うん。」




私は腕を伸ばすと 渉の髪についた桜の花びらをつまんだ。


「花びらがくっついてたよ。」


私の指から 桜の花びらがヒラヒラと飛んだ。


それが地面に落ちると同時に私は言った。




「じゃあね!渉!」




私はクルリと後ろ向きになると 桜のトンネルを歩き出した。




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