この世界で君を愛す
「本当に…どうしようね。渉」


私は時々この場所を訪れては 独り言を話していた。

私にとっては独り言じゃないけれど。


「なんとか言いなさいよ。渉のバカ」


桜の木に八つ当たりして「えいっ」と蹴飛ばした。




その時 急な突風が吹いて 桜の花びらが巻き上げられた。



「きゃ…!」



息も吸えないくらいの強い風が私に吹き付け 目をギュッと閉じた。



ほんの二、三秒で風はやみ 私はそっと目を開けた。



「………桜の雨………」






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