この世界で君を愛す
私はしばらくトンネルの出口を見つめていた。





「どうかしましたか?」



突然声を掛けられ振り向くと そこには一人の初老の男性が立っていた。


私が答えられないでいると その人は私の顔をまじまじと見つめてきた。


「あの…。」


その人はパチンと手を叩くと嬉しそうに言った。


「あぁ!もしかして あの時のお嬢さん?」


「えっ?」


私もその人の顔をじっと見たけれど さっぱり思い浮かばない。


「あのぅ…失礼ですけど…どちら様ですか?」


「いやいや。お嬢さんはおじさんのことをわからなくて当然だよ。」


いぶかしげな顔の私を見て そのおじさんは「わっはっはっ」と笑った。



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