この世界で君を愛す
今でも正木君は このアパートを訪ねてくる。


そして渉の話をする。


「上田さんって 実は意外と小心者でしたよねー。」


とか…。


「上田さんには言えなかったんですけど…上田さんが徹夜で作った資料にお茶こぼしたの俺だったんですよ。殺されそうで言えなかったんです。」


…とか!


渉が聞いたら怒るかもしれないけど。


でも正木君が最後に言うことはいつも同じ。


「俺…上田さんが本当に好きでしたよ。」





私も正木君も 渉の話をする時はいつも笑っている。



こうやって少しずつ…思い出になっていくのだろう。




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