この世界で君を愛す
トンネルを抜けるとオレンジ色の大きな夕日。


隣には目を細めて夕日を見る渉がいる。


夢じゃないんだ…。


「未知。これは夢じゃないんだ。僕はここにいる。でも…」


渉は今歩いてきた桜のトンネルを振り返った。

「君は気付いていたかな…?」


私も後ろを振り返り ある事に気付くとすぐに渉の顔を見た。

渉は寂しそうに微笑んでいる。




夕日を背にした私達の前には長い影が伸びていた。



「ない…」



渉の影はなくて…。


私の影だけが…一人ぼっちでユラユラと揺れていた。




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