この世界で君を愛す
「正木君 あのね…」

私は放心状態の正木君に 桜の木の下で起こった不思議な出来事を話した。

正木君は信じられないという表情で聞いていたが やがて頭をブンブン振るとこう言った。


「…ありえません。そのぅ…こう言っちゃなんですが…一度死んだ人間が生き返るなんて事は絶対にないですから」


「だって渉は…」


正木君は私の言葉を遮って続けた。

「世界には自分とそっくりな人間があと二人いるそうですよ。この人は上田さんによく似た人間だと考えるほうが妥当です。例えば…生き別れた双子の片割れとか」


タバコに火をつけた渉が ゆっくりと煙を吐き出すと言った。

「残念だけど…僕にはもう結婚した姉が一人いるだけだよ」


正木君は口調を強くして負けじと続ける。

「それはわかりませんよ!上田さんの両親に確認しないことには。それか…上田さんそっくりに整形した新手の詐欺かもしれない!」


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