この世界で君を愛す
正木君は完全に力が抜けてがっくりと肩を落とし うっすらと目に涙を浮かべた。


「本当に…上田さんなんですね…?」


「そうだよ。泣くなよ 気持ち悪い奴だな」


「うっ上田さーん!生き返ってくれたんですね!」


腕で涙を拭く正木君に渉は優しく言った。

「ごめんな正木。でも僕は生き返ったわけじゃないらしい」


正木君はキョトンとして言った。

「じゃあ…上田さんの幽霊?」


「どうかな。足もちゃんとあるし 他の人間にもちゃんと見えている。腹も減るし排泄だってする。ただ…僕には影がないんだ。触れられるのに実体がない…そんな存在のようだ」


「影が…ない…」


正木君はそのまま黙ってしまったが 「上田さんは上田さんですよ」と呟いた。


それに対し 渉も小さく「サンキュ」と呟いた。




そう…渉は渉。

私も正木君も…渉に会えて嬉しいんだよ。

良かったね 渉。







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