この世界で君を愛す
シャワーを浴びてベッドに潜り込む頃には もう日付は変わっていた。

後ろを向いて寝ている渉の背中に 私は顔をつけた。



伝わってくる渉の温もり…。


涙腺がゆるんで鼻をすすると 渉の腕にそっと触れた。

「渉…」


すると私の手を温かいものが包んだ。

渉が私の手を握っている。


「あ…ごめん。起こしちゃった?」


「起きてたよ。…未知の手は冷たいね」


渉は体をクルリと回転させて私の方に向き直ると その腕で私をすっぽりと包み込んだ。


髪に息がかかる。

渉の腕に力がこもる。

胸が…いっぱいになる。


「ねぇ 渉?」

「何?」

「あの…ね…」


次の言葉を言う前に 渉のくちびるが重なって私の口は閉ざされた。

優しいキスに私の心が満たされていく。


「ごめん。何だっけ?」

くちびるを離した渉が耳元で聞いたが 私は小さく頭を振った。

「ううん。もういいの」

「なんだよ それ」

渉は笑うと 私の額を指でつついた。





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